大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所田川支部 昭和45年(ワ)61号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕請求原因第一項の事実は本件事故の状況を除き当事者間に争いがなく、<証拠>によれば被告矢野は本件事故前日である昭和四二年一〇月二一日夜来から睡眠をとらず疲労していたため十分の休息をとり安全運転ができる状態で被告車を運転すべきにその休息をとらないまゝ運転し下関市安岡町福江字大塚の国道を時速約五〇粁で進行中居眠りをして運転を誤り被告車を右側路外へ逸脱させて道路標識に衝突させたことが認められ……る。

<証拠>によれば被告会社は被告車の所有者で通常被告会社の業務に供しているところ前記の本件事故前日は土曜日で翌日曜日にかけ被告会社の従業員である亡一木栄次を含む被告矢野ら五人が山陰へ蟹取りに行くため被告会社に対し貸与方を申入れたので被告会社代表者もその趣旨を了解して貸与することを承諾したので右被告矢野らは被告車を運転して蟹取りに出かけその帰途上本件事故が発生したものであることが認められ……る。

以上のとおり被告会社は右会社の従業員が土曜の夕方から日曜日にかけ一種のレクリエーションのため被告車の貸与方を申入れたのに対し特に従業員が利用するものでありしかも限られた短期間の使用で右期限後には被告会社に返還されることが明らかなところから右従業員の使用を許容したものでこれにより被告車についての被告会社の管理が喪失したものというべきではなく、被告矢野らが被告車を前記のとおり使用するについて被告会社の運行支配並びに運行利益も未だ存すると解すべきであり、亡栄次は前記のとおり被告会社の従業員とは言え、被告車の同乗者であつたのであるから右栄次については被告会社は本件事故につき自賠法第三条の責任があり、被告矢野は前記過失により本件事故を惹起したものであるから直接加害者として責任を有する。

しかしながら前記認定のとおり栄次は被告会社の従業員で右会社より被告矢野と共に被告車を借用して蟹取りに行つて帰途上において本件事故に遭遇したものでその借用期間中の被告車の利用については栄次も被告矢野と同一の立場にあり栄次においてもその危険を負担すべきもので被告矢野に対しても栄次は他の同行者と共に蟹取りに行く目的からたまたま被告矢野に被告車の運転を委せたもので共通の目的から被告車に同乗したもので前叙説示のとおり蟹取りで疲労し十分な休息をとらないまゝ被告矢野をして運転せしめた場合安全運転ができるかどうか極めて疑わしいことが明白であるにも拘らず栄次は他の同行者と共に帰途に際し被告矢野が被告車の運転をすることを容認したのであるから被告矢野に本件事故の責任があるとしても前記事情のもとで同乗した栄次にもその責任を負担すべきが相当であつてこれは被告会社に対しても同様危険負担の責任があるので栄次の被告らに対する損害賠償請求につきいずれも四〇%減額するのが相当である。

(松尾俊一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!